フランス語で直訳すると「悲劇」。
有名な物語と同名の本作は、2019年の作品で、舞台はフランスの移住者の多いエリアでの物語。
フランスって、白人ばかりでなくアフリカからの移住者や黒人の血の入った人も多いんですよね。ざっくり世界の母国語で行くと、一番使われている英語は、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの国とほかも多くの国で使用されていて、フランス語は、フランスと旧フランス領の影響でアフリカに多く、スペイン語はスペインと南米の国に多い。
そして博愛や自由に重きをおくフランスの国民柄か、多様性を認めるイスラム系の移住者と対立をし、それを取り締まる警察との間でトラブルが起きる。
ある日、サーカス団の飼っていたライオンの赤ちゃんを連れて帰ったイスラム系の子供。
サーカス団はロマという別の民族の人たちで、家族同様のライオンを連れ去られたことに激怒。一発触発の雰囲気を持つ。
イスラムの考えでは、ライオンは強さの象徴。人間に飼いならされて狭いゲージの中にいてはいけないと、正義感から連れて行ったのかも知れない。
一発触発のロマ人を落ち着かせるためにも、フランスの現地の警察がライオンを連れ去った子供を探す。逃げ回る子供やそれを助けようとする地元の子供たちの中、警察はゴム銃を撃って子供にあたってしまう。
命に別状はないが、顔は大きくはれ上がる重症。しかもそれをたまたま、ドローンで近所の子供が撮っていたため、これがバレると、人種差別にも取られると警察は必至でドローンのデータを回収しようとする。
最後には、警察たちが怒りに燃えた子供たちに復讐されてしまうという話。
まさにフランスの陰と陽が表されたような舞台。感想としては、ここはフランスなのか?
近年のアメリカでの黒人差別と同じような人種差別の問題意識を思い出させる話だった。
先日は9.11同時多発テロから20年が経過。
アフガニスタンでは、タリバンが政権奪還。
争いは終わらないのか。個人的には、ハリウッドでもそうだが、以前から黒人が悪者になっていたり、現在ではイスラム系が悪者になるような描写の映画などが多く目につく。
10年ほど前に、パキスタンを2か月ほど旅した。
日本で目にするニュースなどでは、イスラム人は悪者といった印象操作がなされがちだが、旅人の間では、良かった国の中に「イスラム」系の国を挙げる人が少なくない。
教えの中に旅人にもてなしをするというものがあるからとか諸説あるが。僕も、パキスタンで感じたのは、親切で優しい人たちが多かった。特に隣のインド人の商魂の逞しさと比べると、ストレスはほとんど無かった。
僕たちは、自分と違う考えの人に対して区別して、理解できないからこそ、恐れたり、警戒したりするのではないか。共存する社会においては、多様性を受け入れて、その違いを楽しみながらお互いを優劣付けずに尊重することが大事であろう。
まさに、何からも学ぶことがある状態。
最後に「レミゼラブル」での一節が印象的だった。
「友よ、よく覚えておけ、悪い草も悪い人間もない。育てる者が悪いだけだ」
ヴィクトル・ユゴー